風俗営業許可(1号営業)の取得|スナック・キャバクラ・ホストクラブ開業ガイド
スナック、キャバクラ、ホストクラブなど、店の従業員がお客さんに対し、お酌をする、同席し談笑する、カラオケを一緒に歌う等の「接待行為」をする営業は風営法により「1号営業・社交飲食店」と定義され、営業所を管轄する各都道府県の公安委員会から風俗営業許可(1号営業・社交飲食店営業許可)を取得する必要があります。飲食店営業許可の取得と比べると格段にハードルが高くなっており、要件、提出書類の量がかなり多いのでご注意ください。
風俗営業許可(1号営業)とは
風俗営業許可の1号営業という呼び名は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の第2条第1項の第1号においてその営業形態を定義付けされているため、このように呼ばれています。
1号営業に該当する店舗
業態 | 接待行為の例 | 営業時間制限 | 年少者入店 |
---|---|---|---|
スナック | カラオケデュエット、同席 | 原則午前0時まで | 18歳未満禁止 |
キャバクラ | お酌、同席、会話 | 原則午前1時まで | 18歳未満禁止 |
ホストクラブ | お酌、同席、会話 | 原則午前1時まで | 18歳未満禁止 |
料亭 | 芸者による接待 | 制限なし(例外) | 保護者同伴可 |
※営業時間は地域により異なります。繁華街等では延長が認められる場合があります。
許可取得の3つの要件
風俗営業の許可を取得するためには、次の3つの要件すべてを満たしている必要があります。
1. 人的要件(欠格事由)
- 年齢要件:未成年者は許可を受けることができません
- 破産者:復権を得ていない破産者は不可
- 犯罪歴:一定の犯罪を犯し、その刑期を終えてから5年を経過していない者
- 暴力団関係者:暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 営業取消歴:風俗営業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
- 法人の場合:役員(監査役含む)全員が上記要件をクリアしていること
2. 場所的要件(用途地域・保護対象施設)
- 営業可能地域:近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域
- 営業不可地域:住居専用地域、住居地域
- 保護対象施設からの距離制限:
- ・学校、図書館、児童福祉施設から100m以上(地域により70m〜200m)
- ・病院、診療所(有床)から50m以上(地域により異なる)
- ・大規模店舗内は原則不可
3. 構造・設備的要件
- 客室の床面積:1室あたり16.5㎡以上(和室は9.5㎡以上)
- 客室数:5室以下(地域により異なる)
- 照明設備:客室内の照度が5ルクス以上を確保できること
- 見通し:客室内が容易に見通せる構造(1m以上の仕切り不可)
- 施錠設備:客室に施錠設備を設けないこと
- 騒音・振動:適切な防音設備を設けること
重要な注意事項
- ⚠ 法人の場合、役員1人でも欠格事由に該当すると許可不可
- ⚠ 管理者の常駐義務があります(営業時間中は必須)
- ⚠ 飲食店営業許可も別途必要です(保健所)
- ⚠ 申請から許可まで約55日かかります
- ⚠ 実地調査があるため、内装完成後に申請
法人(会社)名義の許可申請
風俗営業許可の申請は個人だけではなく法人(株式会社、合同会社など)でも可能です。
法人で許可を取得する場合は、役員の方全員が人的要件(欠格事由)をクリアしていることに加え、定款及び法人登記簿の「事業目的」の欄に、許可営業に関連する項目(例:スナック、クラブ等の飲食店の経営)の記載が必要となります。
許可申請に必要な書類及び図面
風俗営業許可の申請の際は、下記の書類及び図面類を取得・作成し、正本及び副本を準備した後、営業所を管轄する所轄警察署の生活安全課を窓口として、各都道府県の公安委員会へ提出します。
基本書類(個人・法人共通)
- 風俗営業許可申請書(様式第1号)
- 営業の方法を記載した書類
- 住民票の写し(本籍記載、3ヶ月以内)
- 身分証明書(本籍地の市区町村発行)
- 誓約書(欠格事由に該当しない旨)
- 営業所の使用権原を証する書類
(賃貸借契約書の写し、使用承諾書等) - 建物登記事項証明書
- 飲食店営業許可書の写し
- メニュー表・料金表
法人申請の場合の追加書類
- 法人登記事項証明書
- 定款の写し
- 役員全員(監査役含む)の住民票の写し
- 役員全員の身分証明書
- 役員全員の誓約書
- 役員全員の履歴書
管理者に関する書類
- 管理者の住民票の写し
- 管理者の身分証明書
- 管理者の誓約書(2種類)
- 管理者の履歴書
- 管理者の顔写真2枚(3cm×2.4cm)
図面類(縮尺1/50〜1/100)
- 営業所平面図(寸法、設備配置明記)
- 営業所求積図(各室面積の計算)
- 照明設備配置図(照度測定位置含む)
- 音響設備配置図
- 防音設備図(構造詳細)
- 建物各階平面図
- 営業所周辺図(半径100m以内)
営業時間と禁止事項
営業時間の制限
地域区分 | 営業可能時間 | 備考 |
---|---|---|
一般地域 | 午前6時〜午前0時 | 標準的な営業時間 |
特定地域(繁華街等) | 午前6時〜午前1時 | 都道府県条例で指定 |
深夜営業許可地域 | 24時間可能 | 極めて限定的 |
営業上の禁止行為
- 客引き行為:路上での客引き、執拗な勧誘の禁止
- 年少者の就業:18歳未満の者を接客業務に従事させることの禁止
- 年少者の立入:18歳未満の者を客として立ち入らせることの禁止
- 名義貸し:他人に営業させることの禁止
- 無許可営業:許可を受けた場所以外での営業禁止
営業上の義務
- 従業者名簿の備付:全従業員の名簿作成・3年間保存
- 管理者の配置:営業時間中は管理者が常駐
- 許可証の掲示:見やすい場所に掲示
- 帳簿の記載:営業日誌等の作成・保存
- 立入検査への協力:警察官の立入検査に協力
申請手続きのスケジュール
事前相談・現地確認(2週間前)
警察署生活安全課で用途地域・保護対象施設の確認
飲食店営業許可取得(1ヶ月前)
保健所で飲食店営業許可を先に取得
申請書類の準備・作成(2週間)
必要書類の収集、図面作成、申請書作成
許可申請(標準処理期間55日)
警察署へ申請書提出、手数料納付(24,000円)
実地調査(申請後2〜3週間)
警察官による現地確認、構造設備の検査
許可証交付・営業開始
許可証受領、管理者証の交付を受けて営業開始
変更届・承継について
申請事項に変更があった場合は、変更内容により異なる期限内に届出が必要です。
変更内容 | 提出期限 | 必要書類 |
---|---|---|
営業所の名称 | 変更後10日以内 | 変更届出書 |
営業所の構造・設備 | 変更前に届出 | 変更届、図面 |
法人の役員 | 変更後10日以内 | 役員の住民票等 |
管理者 | 変更後10日以内 | 新管理者の書類一式 |
※風俗営業許可は原則として承継(譲渡・相続)ができません。新たに許可申請が必要です。
当事務所のサポート料金
風俗営業許可申請(1号営業)
書類作成、図面作成、申請代行まで完全サポート
別途、申請手数料24,000円が必要です
(税込)
飲食店営業許可+風俗営業許可【セットプラン】
飲食店営業許可から風俗営業許可まで一括サポート
別途、行政手数料(約40,000円)が必要です
(税込)
事前調査・診断サービス
用途地域確認、保護対象施設調査、開業可能性診断
(税込)
変更届・各種届出
構造設備変更、管理者変更等の届出代行
(税込)
深夜酒類提供飲食店との違い
項目 | 風俗営業許可(1号) | 深夜酒類提供飲食店 |
---|---|---|
接待行為 | 可能 | 禁止 |
営業時間 | 原則午前0時まで | 24時間可能 |
手続き | 許可制(55日) | 届出制(10日) |
費用 | 高額 | 比較的安価 |
まとめ
風俗営業許可(1号営業)は、スナック、キャバクラ、ホストクラブなど接待行為を伴う飲食店営業に必要な許可です。人的要件、場所的要件、構造設備要件の3つをすべてクリアする必要があり、特に場所的要件は事前の入念な調査が不可欠です。
申請から許可まで約55日の標準処理期間があり、その間に実地調査も行われます。また、営業時間の制限、18歳未満の就業・入店禁止、従業者名簿の備付義務など、営業上の規制も多岐にわたります。
当事務所では、事前の開業可能性診断から、申請書類の作成、図面作成、申請代行まで、風俗営業許可取得に必要なすべての手続きをサポートしております。複雑な要件確認や煩雑な書類作成でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。